この資料は、長年ブリーディングやショーイングをしていた著者がアメリカ人のために書いたガイドラインとしての資料です。どこからどういう形で犬を迎えるか、ブリーダーの選び方などについては、いろいろな考えやそれぞれの立場があります。ブリーダーにもそれぞれの考え、立場、目的、ポリシーがある場合が多いものです。「良心的なブリーダー」という基準は何か?これは実は難しく奥の深い問題で、唯一正しい答えはコレ!と決まったものがありそうで個々によって違うのではないかと思います。この資料の内容全てに「YES」という人がみつかれば、それは理想的であると言えますが『それだけ』という問題でもないのが現実だと思います。この質問表通りの答えが返ってこない場合、それ以上の質問をする必要もあるでしょう。単に答えが「YES」であっても、実際はどうなのか、もっともっと話をして聞いてみなければならないこともあります。そしてそのブリーダーさんと今後、どういうお付き合いをしたのか、ということもブリーダー選びの際に考えておく項目でもあると感じます。
 この資料はあくまでも「参考の一つ」「判断材料の指針の一つ」として、実際に仔犬を探す、ブリーダーを探す場合は実際に自分の目で見て、自分の言葉と考えで話をして、耳で聞いて、そして自分の考えで判断していただければ、と思います。そして、犬を迎えるのであれば、まずは実際に犬について知ること。勉強すること。特定の犬種が希望であればその犬種についても勉強する必要があります。日本とアメリカとの現実的な違い、文化の差もあります。仔犬を迎える側もブリーダーと同じくらいたくさん「宿題」があることもぜひ念頭においてほしいと思います。

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この質問表は純粋犬の仔犬を求めようと考え、良心的で信頼できるブリーダーを探している人達のために作られたものです。
これから仔犬を求めようとしている人達はブリーダーに何を尋ねればよいか、また、ブリーダーからどういう答えを期待すればよいのかわからないことが多いものですが、この質問表がこうした疑問を解消し、適切なブリーダー選びの手助けとなることを願っています。

注意:
質問することを恐れないでください。良いブリーダーは仔犬の買い手から質問されることをむしろ歓迎するものです。もしもブリーダーがあなたから質問されることを嫌がったり、質問に対して身構えたりするようであれば、ていねいにお断りしましょう。

もしもブリーダーが「自分の犬達には健康上問題がないので、健康診断の必要はない」と言うのであればていねいにお断りしましょう。健康チェックなしにどうして自分の犬が健康であると言えるのでしょうか。

もしもブリーダーが「健康チェックはしているが、その証明のコピーをあなたに送ることはできない」と言うのであれば、ていねいにお断りしましょう。

もしもブリーダーが「コストがかかりすぎるので、全ての犬の健康チェックをすることはできない」と言うのであれば、ていねいにお断りしましょう。

もしもブリーダーが「この仔犬は予定外の繁殖で生まれた子だ」と言うのであれば、ていねいにお断りしましょう。良心的なブリーダーの所ではこうした予定外の繁殖が起きることはありません。どの繁殖もよく考えた末に目的をもって行われているはずです。

ブリーダーもあなたにたくさん質問をすることでしょう。信頼できるブリーダーは仔犬それぞれの行く先について非常に関心を持っているものです。こうしたブリーダーの質問には正直に全て答えてください。もしかしたらあなたに合う仔犬を選ぶために、ブリーダーの方があなたに質問表を渡して記入を求めたりするかもしれません。あなたが仔犬を買うかどうか、提示した金額を支払うかどうかということばかりを気にしていて他のことには関心のないブリーダーには十分注意してください。

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Q:この犬種を扱うようになってからどのくらいになりますか?
ヒント:犬の繁殖をするようになるまでに、数年は経過している方が好ましいと言えます。繁殖をする前に遺伝学や犬の世話について、栄養について、犬種標準、そして行動学などに関して詳しくなくてはなりません。

Q:毎年、どのくらい繁殖をしているのですか?
ヒント:AKC では、毎年10胎以上の登録をするブリーダーを調査する場合があります。仔犬を育てることは重労働です!いつでも仔犬がいるようなブリーダーや、一度にたくさんの仔犬を抱えているようなブリーダーは、それぞれの仔犬の世話や社会化をきちんとやっていないかもしれません。

Q:この仔犬の父犬と母犬は何歳ですか?
ヒント:2歳以下の犬を繁殖に用いることは絶対に避けるべきです。これは大型の犬であればなおさらです。というのも、大型犬ほど肉体的にも精神的にも成熟が遅いのです。また、多くの遺伝的な健康上の問題は2歳かそれ以上に犬が成長しないとわかりません。犬の健康について関心のあるブリーダーは若い犬を急いで繁殖に用いたりはしないものです。

Q:この犬種が抱えている健康上の問題は何ですか?
ヒント:もしもブリーダーが、この犬種には遺伝的な健康問題などないとか、そのようなことには関心がないと言うのであれば、ていねいにお断りしましょう。どんな犬種にも遺伝的な健康上の問題があり、犬種によってはより多くの問題を抱えています。ブリーダーはこのような問題に対して知識と情報を持っているべきです。

Q:仔犬の両親犬はレントゲン診断で股関節の検査を受けていて、股関節形成不全ではないと証明されていますか?OFA などの正式な診断証明がありますか?
ヒント:OFA や GDC といった機関は、股関節に異常があるか、正常であるかレントゲンで診断します。OFA は生後24ヶ月以上、GDC は生後12ヶ月以上の犬の診断と登録を行っています。股関節のレントゲン診断をして股関節に異常がないと証明されない限り、繁殖に用いるべきではありません。(参照)

Q:両親犬は過去12ヶ月以内に、眼科専門医によって目の検査を受けていますか?検査で遺伝的な眼疾患、例えば白内障、進行性網膜萎縮症(PRA)などには冒されていないと証明されていますか?
ヒント:繁殖に用いる犬達には、遺伝性眼疾患について、毎年その可能性がないかどうかのチェックをするべきです。PRA やその他の遺伝性眼疾患が認められた犬は繁殖に用いてはなりません。(参照)

Q:両親犬は、vWD の検査を行っていますか?
ヒント:vWD は遺伝性の出血性疾患です。血液検査、もしくは(犬種によっては)DNA テストで病気に冒されているか、キャリアか、正常かが簡単に診断できます。vWD に冒されている犬は繁殖に用いるべきではありません。(参照)

Q:両親犬は過去12ヶ月以内に皮膚生検によって脂腺炎(SA)の診断を受けていますか?
ヒント:SA はスタンダード・プードル、アキタやその他の犬種においてよくみられる遺伝性皮膚疾患です。SA では、症状が現れるタイプと現れないタイプの2つの型があります。症状が現れるタイプでは、被毛が抜け落ちたり、フケがひどかったりして臭いますが、症状が現れないタイプだと外見上は全く正常に見えます。このように外見上は正常に見える犬が実は SA に冒されているかどうかを知る唯一の方法が皮膚生検です。SA に冒されている犬は、例えそれが外見上正常に見えても繁殖に用いるべきではありません。(参照)

Q:両親犬の遺伝性疾患に関する診断書のコピーをいただけますか?
ヒント:良識的なブリーダーは、こうした情報を快く提供してくれるものです。

Q:両親犬は今までにてんかん発作やブロート(胃捻転)を起こしたり、その他健康上問題を抱えたことがありますか?
ヒント:てんかんや胃捻転など、事前の検査ではわからない遺伝性の問題もあります。こうした、検査で知ることのできない病気や問題の情報については、あなたが直接ブリーダーに聞かない限りわかりません。

Q:仔犬に健康保証はつけてもらえるのでしょうか?もし保証があるのなら、どのようなものか説明をお願いします。
ヒント:伝染病に対して48〜72時間の保証をつけてくれるのが妥当なところです。この時間の間に仔犬を獣医師の元に連れていくべきでしょう。

Q:この仔犬に関して何か特別な制約や条件がありますか?
ヒント:もしもあなたが、普通のペットとして仔犬を買うのであれば、ブリーダーはペットクォーリティのその仔犬を繁殖に用いることは望まないはずです。
売った仔犬の繁殖の権限を持とうとしたり、あなたにその仔犬を繁殖させて生まれた仔犬の中から一定の数を渡してくれと言うブリーダーがいるかもしれません。こういう方法はブリーダーが簡単にお金を稼ぐ手段とも言えます。あなたが買った仔犬を将来繁殖しなければならないとか、ブリーダーがあなたの仔犬を将来自分の繁殖に使うことができる、といった内容が書かれている書類にサインしてはいけません。
繁殖とは重労働で経費もかかるものです。もしもブリーダーが自分にかわってあなたが繁殖することにこだわったり、繁殖の目的のために犬を戻してほしいと言うような場合、その人は犬そのものの幸福や犬種の将来について深く考えていないかもしれません。繁殖とはショークォーリティの犬のみが、経験と知識のある人のみによって行われるべきものです。

Q:仔犬はブリーダーの自宅で育てられるのですか、それとも犬舎ででしょうか?
ヒント:家庭で育てられた仔犬は、いろいろな場面や音を経験することが可能で、そのような経験が社会化に役立つだけでなく、将来新しい環境に置かれた時にも適応しやすくなるのです。それに比べて犬舎飼いで育った仔犬は新しい家庭に迎えられた時、環境に慣れるまでにより時間がかかる可能性があります。

Q:仔犬は生後どれくらいで渡してもらえるのでしょうか?
ヒント:仔犬は生後7週間までは母犬や兄弟犬達と一緒にいるべきです。この時期より以前に親や兄弟犬から引き離された仔犬は、犬としての社会性を十分学んでいない可能性があります。このような仔犬が大きくなった時に他の犬に対して攻撃的な態度をとるようになるかもしれません。仔犬を迎え入れるのに一番適切な時期は、生後7週から12週の間です。仔犬は生後7週齢でほぼ神経学的な面が完成し、12週までにおおよその性格が形作られます。

Q:仔犬をいただく前に獣医師のチェックをしていただけるのでしょうか?
ヒント:ブリーダーの元から新しい家庭に行く前に、仔犬は全て獣医師によってチェックされるべきです。例えば、心雑音のような異常は獣医師でないとわかりません。多くのブリーダーは、獣医師による仔犬の健康証明書を渡してくれるものです。

Q:仔犬をいただく時、予防注射は打ってありますか?
ヒント:ブリーダーの元を出る前に一度は予防注射を受けているべきです。

Q:仔犬は渡される前に駆虫してありますか?
ヒント:仔犬のほとんどは、生まれつき回虫をもっています。仔犬は早ければ生後3週から何度か駆虫が必要です。仔犬をいつ駆虫したか、どのような寄生虫が仔犬にいたか、どのような薬剤で駆虫を行ったかなどの情報をブリーダーは仔犬の買い手に伝えるべきです。仔犬がブリーダーの元で何度か駆虫をされていても、最初に獣医さんにかかる時に便を持っていって検査してもらうほうが無難でしょう。

Q:仔犬をいただく前に、グルーミングしてもらえますか?
ヒント:仔犬は新しい家庭に行く前にシャンプーされ、爪を切り、耳もきれいにされているべきです。プードルの仔犬の場合は顔や足先、尾の付け根がクリッピングされます。

Q:仔犬と一緒に渡される物は何でしょうか?
ヒント:ブリーダーは、仔犬の登録に必要な書類、あるいは血統書、予防注射や駆虫のスケジュール、食餌についてのインフォメーションや最初の数日分必要なフード類、健康証明書あるいは契約書、遺伝性疾患に関する両親犬のテスト結果、そして獣医師による仔犬の健康証明書といったものを渡すでしょう。多くのブリーダーはその他に仔犬の最初のトイレのしつけ方やトレーニング、食餌、犬種の歴史などを書いた「パピー・マニュアル」と呼ばれる案内書などを渡してくれるものです。

Q:仔犬の値段はどのくらいですか?
ヒント:仔犬の値段はその仔犬の質や性別、地域によっても違ってきます。ショー用の仔犬は値段が高い場合が多いのですが、果たしてその仔犬が「ショークォーリティ」なのかどうかを生後7,8週間で見分けることは実はとても難しいということも事実です。このくらいの年齢では、ショークォーリティかどうかの見極めはある意味ブリーダーの推測でしかありません。メスの方がオスよりも高い場合もありますが、仔犬を育てるのにかかる費用はオスもメスも同じです。それゆえ、性別によって仔犬の値段に差があるものだとは必ずしも言い切れません。
おおよそ犬種により、どのくらいの値段が妥当かという目安があります。この妥当だと思われる範囲から大きく離れて高い、あるいは安いという場合はちょっと注意が必要かもしれません。いわゆる「バーゲン価格」とか「安売り」といったものを探すのもおすすめしかねます。
極端に妥当な価格よりも安い場合は、ブリーダーが仔犬に十分な経費をかけていないおそれもあります。
ここで問題は、価格がどのように仔犬に反映しているか、ということです。中には自分の犬を必要以上に過大評価して、親がいい犬だから、とその仔犬の値段を高くしているようなブリーダーもいます。他のブリーダーよりも仔犬の値段が高いからといって、その仔犬の質が良いとは限りません。

Q:自分の好みにあうような仔犬を兄弟犬の中から選ばせてもらえますか?
ヒント:ブリーダーもあなたやあなたの家族、ライフスタイルなどについて多くの質問をすることでしょう。ブリーダーはあなたがどんな仔犬が欲しいのか、例えば、大きめの子がいいのか、誰かが来た時に吠えてくれるような犬がいいのかなど、知りたがるはずです。多くの場合、あなたの好みにあうような仔犬をブリーダーが選んでくれるでしょう。同じ腹の兄弟でもそれぞれ性格が違うもので、ある子は他の子よりも社交的であったり、あるいは他の兄弟よりもおとなしかったりとさまざまです。仔犬の買い手それぞれに見合った仔犬を選ぶのもブリーダーの役割の一つです。本などにはよく、呼ばれたらすぐにやってくるような仔犬を選ぶべきだと書かれていることがありますが、そのような仔犬は往々にして兄弟の中でも一番押しの強いタイプであったりします。このような押しの強いタイプの犬を選ぶことはできたら避けたいもので、これはおとなしかったりシャイな仔犬にも言えることです。小さな子供が4人もいるような家庭に、こういったタイプの仔犬は向きません。ブリーダーは仔犬が生まれた時からみていて、それぞれの仔犬の性格も把握しているはずですから、どの仔犬がどのような家庭にいったら良いかを一番よく知っているはずです。しかしながら、もしもブリーダーが選んでくれた仔犬があなたとは合わないようであれば、すぐにその仔犬をブリーダーの元に返すようにしましょう。

written by Diane Laratta, Lima OH

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