プードルは、数ある純粋犬種の中でも比較的古い犬種であると言われています。フランスの国犬になっていることもあり、原産国はフランスであるとされることが多いのですが、実は犬種の起源、原産地はどこであるかはっきりとわからない部分があります。しかしながら、プードルという名前の語源は「水を跳ね返す」という意味のドイツ語「Pudel」からきており、ドイツがその発祥の地であるというのが現在有力な説となっています。
 フランスでは19世紀の初め頃「カニッシュ」という名で呼ばれていたプードルは大変人気があり、トリュフ・ドッグとしても使われていました。プードルの小型化にフランスが多いに貢献しており、プードルの原産はドイツ、改良・発展に貢献したのはフランスとするのが妥当なところでしょうか。

プードルには3つのサイズ(バラエティ)があります

 プードルはもともと水鳥の回収犬(レトリバー)として使われていたという歴史があり、独特の毛の刈り込みは、水の中を泳ぎやすいように工夫し、また冷たい水から心臓や関節を保護するためでした。ドッグ・ショーで見られる刈り込み(クリップ)はそれらが更に発展した形です。

 ミニチュアやトイというサイズは、スタンダード・プードルを徐々に小型に改良して作出されたもので特にフランスではミニチュアの発展に貢献があったといわれています。大きさの違いはありますが、どのバラエティも同じ「犬種標準」を持つ同一犬種です。


プードルのサイズとバラエティ(2003年末時点まで。2004年4月以降は下記参照)

 プードルは、サイズによって3つのバラエティがあります。
 一番小さいバラエティがトイ・プードル、次にミニチュア・プードル、そして一番大きなバラエティがスタンダード・プードルです。どれも同じ犬種標準をもつ同一犬種で、違いは大きさ(背丈で計る)だけです。

1)トイ・プードル

 プードルの中でもっとも小型です。犬種標準による体高は立った時に床から肩の一番高い位置(キ甲)までの高さが11インチ(約28センチ)以下と規定されています。日本では最も人気もあり、一番数の多いバラエティです。
 ちなみにアメリカの犬種標準によるサイズ規程では10インチ=約25.5センチ以下とされていて、日本やヨーロッパよりも一回り小さくなっています。

2)ミニチュア・プードル

 中型サイズのプードル。犬種標準では体高11インチ以上、15インチ(約38センチ)以下。日本では一番数の少ないバラエティです。トイ・プードルのオーバーサイズは規定上ではミニチュアに分類されてしまいますが、基本的な骨格構成、全体の雰囲気などがやはりオーバーサイズのトイと、血統的にミニチュアのラインでずっと繁殖されてきたミニとでは微妙に違っています。

3)スタンダード・プードル

 プードルの中で一番大きく、犬種的にも最も古いバラエティとされています。犬種標準として体高の上限規定はなく、15インチ以上がこのカテゴリーに入ります。平均的な体高はおおよそ22インチから大きいタイプの犬で27インチ(約56〜68.5センチ)くらいになります。オスの方がメスよりもひと回り大きめになる傾向があります。


サイズの問題について

 アメリカなどでは体高が8インチ(約20センチ)あるかないかというほど特に小さなトイを好んで繁殖している人達がいます。それらの小さなトイを「Tea Cup Poodle」あるいは「Pocket Toy」などと称していますが、犬種規程上、そのような極小サイズのバラエティはありません。小さい個体は見た目がかわいく、そのような犬を求める人達もいるのでしょうが、極度に小さい犬には健康上の問題があることが多いと言われていますし、事実、骨格構成上問題が多いこともよくあります。また、身体的に問題がある、あるいは成長過程で問題があるために結果として育たずに小さく収まってしまった、というケースもあります。
 この1,2年、日本でもティーカップを宣伝するような繁殖者も増えているようです。しかし、トイは規定内、ことに AKC での10インチ内のサイズの犬で十分に「小さい」と感じます。それよりも小さなものをあえて作出しようとすることは、いかがなものか、という疑問を感じざるを得ません。
 トイ・プードルは小さければ小さいほど良いというものではなく、少なくとも健康に過ごせるだけの骨格構成が必要です。ドッグショーに出陳せずに家族の一員として暮らすのであれば、多少オーバーサイズであっても心身ともに健全な犬の方が良いのです。「小振り」とか、「ティーカップ」です、と言われて育ててみたら普通のトイのサイズに順調に育ってしまう子もいますので、ことさらに「ティーカップ」「小振り」「体重○キロ」などというのはどうか、という疑問も残ります。特に体重は目安にしかなりません。小柄でも太っていれば、大柄で細い子と体重が変わらないかもしれないのです。
 いずれにしても、うんと小さな犬が欲しければプードルではなく、チワワの方がよいかもしれません。

 トイに対してスタンダードの場合、今度は大きければ大きいほどいいのか、という問題があります。スタンダードもトイと似たようなもので、その大きさばかりを強調している人達がいます。Royal Standard Poodle あるいは Giant Poodle という呼び名はそれら、平均よりも大型のスタンダードに対する呼称(俗称)であり、そのような犬種、あるいはバラエティがある訳ではありません。極端に大きな犬も骨格面をはじめ、健康上に問題があると言われており、単に大きければ大きい方が良いという犬種で決してはありません。超大型犬が欲しい方はプードルではなく、グレートデンやピレニーズにした方がよいでしょう。
 なお、ジャンボ・プードルというバラエティもありません。どんなに大きくてもスタンダード・プードルはスタンダード・プードルです。

サイズの問題について その2

 2003年暮れになってJKCは突然、プードルのバラエティ追加とそれに伴ってスタンダード・プードルのサイズ規定を発表しました。
 2004年4月より、バラエティは4つ。小さい順にトイ、ミニチュア、ミディアム、スタンダードとなり、ミニチュアとスタンダードの中間のバラエティを追加しました。(会報によれば、ミディアムの登録があったため)これは、おそらくヨーロッパからミディアム・プードルを輸入してJKCに登録したケースが発生したために、急遽追加したものと思われます。
 ミディアムのサイズは体高38〜45cm、スタンダードは45〜60cm(上下2cmまで許容)となりました。個人的にスタンダードの上限が定められたことについては異論はありません。これにより、大きければ大きいほどいいというような繁殖の抑制になると思うので上限はあった方がいいと考えています。しかしながら、60cm+2cmとしたところで、現状の日本のスタンダード、このサイズをオーバーする犬が特にオスは多いのではないでしょうか?62cmとして、約24.5インチ。オスの場合、25インチくらいはどちらかというと平均的といっていいサイズですし、日本のスタンダードの血統ラインの基礎の多くがアメリカラインの犬であるという現実を考えると、このサイズは非常に厳しい数字だと思われます。現実問題、今までに私が日本のショーで見てきた成犬のオスはほぼ楽勝で24インチ(約61cm)を超えるくらいはありますし、これよりももっと大きい犬を今までにショーでも巷でも、いくつも見てきています。
 過去から今日までのスタンダード・プードルのブリーダーはこのサイズ規定をどう考えているのでしょう?JKCは現場のブリーダーやショー出陳者などの意見は考慮したのでしょうか?ショーでは今後、スタンダードの体高もリング内で測るのでしょうか?許容範囲を超えるオーバーサイズの場合は失格なのでしょうか?それとも重大欠陥なのでしょうか?(トイ、ミニの今までの経緯を考えると失格事項かな?と思うのですけれど、、)今一つ、このへんが明確ではなく、今後この問題については興味深く見ていきたいものです。

サイズの問題について その3

 2007年7月より、JKCはミニチュアとミディアムプードルのサイズ変更を発表しました。また、同時にトイの下限サイズも設定されました。それによると、トイは体高が24cm=約9インチ半以上なくてはなりません。つまり、極端に小さいトイプードルはトイプードルとして本来適さないよ、ということになります。巷で宣伝文句になっている「ティーカップ」というものについて、もう一度よく考えてみてほしいものです。

 今回の改正でミニチュアは28cm〜35cmまでと、従来より3センチ小さくなりました。ミディアムは35cm〜45cmとなって、下限枠が3cm広がりました。
 日本の多くのミニチュアはアメリカ系で成犬になった時に35cmを上回るタイプの犬達ばかりだろうと思われます。このため、今後はバラエティ変更でミディアムプードルとしてショーに出さざるを得なくなり、従来からのミニチュアの愛好家には納得がいかないところだと思いますが、実は今回のサイズ規程は、JKCが加盟しているFCIの犬種標準に正しく沿った内容ということになります。(ヨーロッパの国の中には、ミニチュアを「ドワーフ」ミディアムを「ミニチュア」と呼んでいる国もありますが、サイズはFCIのサイズを採用しています)
 プードルの原産国ははっきりとしないものの、ヨーロッパが発祥と思われることを考えるとFCIの4つのバラエティとサイズが妥当な考えなのかもしれない、という気もします。また、バラエティは違っても「ひとつの犬種標準をもつプードルという同一犬種」であるという考えからみればバラエティ変更を余儀なくされてバラエティの名称が変わったとしても、それは「同じ犬種内で収まる範囲の違い」であり、プードルとして否定された訳ではなく、プードルという犬種のバラエティの中で逆に選択肢の幅ができたと考えても良いのかもしれません。というのも、北米(アメリカ・カナダ)のミニチュアプードルブリーダーの切実な問題は、ドッグショーの現場で15"(38cm)をわずかでも越えるオーバーサイズのミニチュアの行き場がない、ということなのです。アメリカではサイズに関しては厳しく測るジャッジも多く、例え2分の1インチ(約1センチ強)越えただけでもオーバーサイズでミニチュアとしては失格扱いになります。ミニチュアのオーバーサイズはAKC、CKCの犬種標準では「スタンダードプードル」扱いになるのですが、例え小振りでも22インチ以上あるスタンダードと同じリングに並ぶのは無理があるからです。ちなみにアメリカの登録証、血統書にはバラエティは記載されず、全て「poodle」としか書かれていません。

プードルの毛−シングルコート or ダブルコート?

 他の犬種のように一年のうちに換毛期のないプードルの毛は、シングルコートなのか、それともダブルコートなのか、というのは長年意見が分かれていることだったようです。今でも犬種本なのではプードルはシングルコートであると書かれていることが多いのですが、実際はダブルコートです。アウターとアンダーの差がわかりづらいのですが、わずかであるがアンダーコートも持つ「ダブルコート」である、というのが現在の見解です。


毛色に関して

 ブリード・スタンダード(犬種標準)において、プードルの毛色は「単一色」(ソリッド・カラー)が求められています。中間色(シルバー、ブラウン、アプリコット、クリーム)においては、色の「濃淡」は認められていますが、異なる2色、例えばブラック/ホワイトやブラック/タンなどは標準にはそぐわない「ミスカラー」とされています。
 最近、ブリーダーなどが「珍しい色」としてパーティカラーやブラック/タンの仔犬を高値で売ることがあるようです。ドイツにおいては、一部の犬種団体がパーティカラーのプードルを認めていますし、パーティカラーのプードルの愛好家が諸外国にもいるようですが、あくまでもJKCをはじめたとした世界各国の主流の犬種団体においては認められていないものである、という事実は知っておくべきでしょう。(*注1)それと同時に、ミスカラーは遺伝しますので、繁殖の意義を考えた場合、ミスカラーの個体を繁殖に使うことは是か非か、良識ある判断をするべきではないでしょうか。

 プードルの毛色はいくつもあるのですが、最近は他と差別するためか、聞いたこともないような毛色を言うブリーダーも多いようです。例えば「ダーク・レッド」とか「チョコレート・ブラウン」「シャンパン・ゴールド」などです。
 ここで注意すべきは、正式な毛色の名称はレッドはレッド、アプリコットはアプリコットであり、ブラウンはブラウンだということです。ブリーダーの巧みな「売り文句」「宣伝文句」には惑わされないようにしたいものです。
 ホワイトがいかに「白いか」を表現するために「アイス・ホワイト」と言ったり、ブラックがいかに「黒いか」を表現するのに「ジェット・ブラック」と言ったり、いかに「明るいシルバーか」を表すために「プラチナ・シルバー」と言うことがありますが、これらは毛色の表現の仕方にすぎません。ホワイトはホワイト、ブラックはブラック、シルバーはシルバーです。
 余談ながら「シャンパン」あるいは「シャンパン・ゴールド」という名称の毛色は「犬種標準上」プードルにはありません。「シャンパン」という表現がどのような色を意味しているのか、ブリーダーに聞かないとその真意は謎ですが、私の手持ちの資料によればシャンパンは一種のミスカラーということになります。これは、生まれた時はブラックか濃いグレーですが、非常に若い仔犬のうちにほぼ全身がベージュのようなクリーム色かホワイトに近い色に退色します。(シーズーのゴールドと同じように、毛先はブラックですが根元からすぐに退色)ところが往々にして体幹部分、特に耳、尾のみがブラックやグレーのまま残ります。このため、silver-eared cream(シルバー耳のクリーム)、あるいは washed-out silver(洗いざらしのシルバー)もしくは balck-born white(黒く生まれたホワイト)といった呼び方もされるようです。(*注2)
 
過去、私はこの表現する毛色のプードルを3頭ほど見たことがありますが、犬種標準に書かれているどの色でもないし、毛の多くが退色しているもののシルバーでもホワイトでもなく、また、シルバーの退色の仕方とも明らかに違い、体幹部分にはブラックが退色せずに残っていました。私はこれはミスカラーの一種だろうと確信しています。そもそもシャンパンという毛色も犬種標準では認められていない色ですし、きちんと勉強して真面目に繁殖をしているブリーダーであれば、公認カラーと公認外、あるいはミスカラーの区別はきちんとしているはずでしょう。なお、ベージュという色もプードルにおいてはない色です。

(注1)犬種標準では認められていませんが、ごく普通の家庭の一員として過ごすことにおいては問題はありません。
(注2)ブラックの両親犬から生まれたホワイトのことではありません。ここで表現しているのは、生まれた時は黒かったが、すぐに白く退色して白くなってしまった、という意味です。ミスカラーでないホワイトは、両親犬がブラックでも、生まれた時に黒いということはありません。

Revised 01, 06-2004

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