アディソン病(Addison's Disease)

 アディソン病は、内分泌疾患の一つで、副腎皮質機能低下症ともよばれます。
 副腎には皮質と呼ばれる部分があり、ここから副腎皮質ホルモンが分泌されるのですが、アディソン病は副腎皮質の機能が低下し、副腎皮質ホルモンが不足する病気です。(ちなみに、副腎皮質から過剰なホルモンが分泌される病気が、クッシング症候群=副腎皮質機能亢進症です。<注1>

 この病気は、一般的に若齢から中齢のメス犬に多いとされています。どの犬種にも起こりうる疾患ですが、スタンダード・プードルに比較的多くみられ、現在ではスタンダード・プードルにおいて、特に若齢で発症するアディソン病は遺伝性であると考えられています。スタンダード・プードルの場合、オス、メスの別なく発症します。その遺伝モードについては不明で、研究がなされている段階ですが、常染色体劣性遺伝ではないかという見方がされています。CGAPでのリサーチに御協力ください)

 2008年1月、遺伝モードに関して研究の途中報告がされました。それによると、従来考えられていた常染色体劣性遺伝ではなく、おそらく多因子性遺伝(polygenic)によるものではないか、とのことです。どのような遺伝子が関わっているのか、また、環境的素因がどのように働いているのかはまだ不明ですが、この病気は遺伝的要因によるものであるとほぼ断定しています。
 CGAPではDNA解析のために引き続き、特にアディソン病を発症している犬のサンプル(血液)と7歳以上でアディソンを発症していない犬のサンプルの提供を呼びかけています。(ビアデッドコリー、グレートデン、レオンベルガー、ポーチュギーズ・ウォータドッグ、スタンダードプードル、ウェストハイランド・ホワイトテリア)詳しくは、CGAPのサイト、もしくはPoodle Health Registry を参照してください。

 一般的な症状として、意気消沈、不活発、食欲不振、嘔吐、下痢(血が混じることがある)、腹痛、体重減少、震えといったものがありますが、この症状が散発的に現れたりすることがあり、数日すると症状が消えたりするために飼い主が病気に気づきにくいという一面があります。また、曖昧な症状のために初期では獣医師も見過ごす場合があります。
 診断には、血液検査=一般的な生化学検査(特にナトリウム、カリウムの比率のチェック)、尿検査(尿比重のチェック)をします。アディソン病になると心臓が小さくなるため、胸部のレントゲン検査を行います。副腎皮質ホルモン刺激検査(ACTH 刺激試験)が確定診断には欠かせません。

 アディソン病は、急性の場合や発見が遅れて慢性になった場合は特に命に関わる重大な疾患です。不幸にもアディソン病とわかったら、その処置には生涯にわたって薬剤でのコントロールが必要です。この薬剤の量を確定するために定期的な検診、検査が欠かせないため、飼い主にとっては日常のケアだけでなく経済的な負担も大きなものになりがちです。

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★獣医師の先生とスタンダードプードルの飼い主の方へ★

 スタンダードプードルにおいてアディソン病は、若年齢(若い場合は1歳未満から)で発症するケースが多くあります。通常、中高齢になってからの病気という認識があるために若いスタンダードがアディソン病に似た症状で来院しても、その病気が疑われることは非常に稀で、様子見をしているうちに悪くなってしまうケースが少なからずあります。そのため、スタンダードプードルがアディソン病に似た症状を呈した場合は、たとえ若くても念のため検査をしてくださるようお願いいたします。

<注1>
 クッシングになった場合、出過ぎる副腎皮質ホルモンの分泌を押えるため Op-DDD という薬剤がよく使用されます。アディソンは、この Op-DDD の過剰投与で起こる場合もあります。

<余談>
 私の知りあいのスタンダード・プードルの子は、2歳になるほんの数日前にアディソン病で亡くなりました。闘病中の飼い主の日常的なケアの大変さ、莫大な医療費を払わざるを得なかった経済的な負担、罪のないかわいい我が子が病に苦しむ姿を目の当たりにする精神的な苦悩、そして亡くなった後の深い悲しみ。
 現代のスタンダード・プードルはこういう過酷な病気を「遺伝的な問題」として抱えていることを、どうか繁殖者は認識してほしいと思います。不幸な子とその不幸な子のために悲しむ飼い主を作らないためにも、アディソン病を発症した個体は繁殖には用いないでほしいと思います。また、血縁の個体は慎重に血統調査をした上で繁殖に用いることとし、その調査ができないのであれば諦めることも選択肢として必要ではないかと思います。

<余談2>
 これは学術的な裏付けなどはないのであくまでも私の見聞などによる経験談ですが。。
 この10年以上、アディソン病に関していろいろと調べたり、実際に病気になった犬達のデータを見た限り、遺伝的に問題のあるアディソン病は、その発症年齢が驚くほど若い、という感覚があります。どれくらい若いかというと、生後2歳、3歳という、およそアディソンには関係なさそうな若年齢です。ちなみに私が調べた中で一番早い例は、上記の知りあいの子の2歳前です。また、遺伝的に問題のあるアディソンの場合、同胎児複数が前後して発症しています。ですので、アディソン病の重大度(?)は、発症年齢がひとつの鍵のような気がしています。このへんの私の個人的な考えに対して学術的な裏付けがどこかにあれば、、、と思っているところです。更に勉強は続く、、、と。。。(苦笑)

07-2004
updated 05-2008
updated 12-2018

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