プードルと暮らす上でのヒントなど

★まず仔犬に教えること

 仔犬が我が家にやってきたら、当然誰もがまずトイレやおすわりといったことを教えるでしょう。プードルの仔犬が来たら、この他にもう1つもっと大切な事があります。
 それは 1)おとなしく立ったままでいること 2)手入れを受け入れること この2点です。
 言うまでもなく、生涯にわたって必要な手入れをお互いに気持ち良くできるようにするための大切なポイントです。おすわりを教える人は多いと思いますが「立って」を教える人は少ないかもしれません。しかし、これはカットの時にずっと立っていなくてはならないため、小さい時から教えておくべきだと私は考えています。

 グルーミングテーブル(トリミングテーブル)があれば一番いいのですが、なければしっかりした台の上でも構いませんし、もちろん床で教えても大丈夫です。台などを使う時は、足元が滑らないようにしてください。それと、勝手にそこから飛び降りないようにすることも必要です。顎の下とお尻(股の間)に手を添えた形で、両手で支えてまっすぐ立つようにします。この時にうまくできないからと仔犬を叱ることは避け、少しでも立っていたらほめることが肝心です。そしてこの「立っていられる状態」を数秒から徐々に長くできるようにしていきます。(顔の方は支えたままで構いません。)

 手入れを受け入れるようにすることは、そのまま、仔犬の体をどこでも自由に触ったり、時に足先や尻尾の先を軽く掴んだりすることに慣れさせることです。徐々にピンブラシなどにも慣らしていくようにします。

 立っていられること、手入れを受け入れられるようになることの2点と同時に「テーブルの上で横になること」も教えたいことのひとつです。これは、特にスタンダード・プードルの場合は必須になります。というのも、スタンダードのドライヤーは毛の長さなどにもよりますが1時間以上かかることが多いので、人も犬も寝ていてくれた方が断然楽だからです。
 テーブルに横になった状態でブラッシングを受け入れられるだけでも、手入れをする方は楽です。仔犬のうちはすぐに立ち上がろうとしますが、根気よくまた寝かしつけるようにしていきます。

 仔犬は集中力がないため、飽きっぽかったり落ち着きのないのは仕方がないことです。しつこく、しつこくやらず、短時間で上手にできたら、また、少しでも落ち着いて受け入れてくれたら、確実にほめて終えるようにします。

★手入れと毛の管理

 定期的なカットがどうしても必要になります。
 毛は人間の髪の毛と同じく、生涯伸びますしその毛の性質上(巻き毛)ほうっておくだけで絡むというのがプードルの毛の最大の欠点です。これを防ぐには、まめにブラッシングやシャンプーをすることになります。

 仔犬の場合、生後6,7ヶ月頃からの手入れが一番大変です。アンダーコートが吹いてくるようになるので、毛の長さにもよりますが前の日にブラッシングしても翌日にはもう絡んでいる、ということがよくあります。特にショーコートにしている場合はこの頃から1歳半過ぎまではかなり大変になります。ショーコートの場合は、絡みがひどくなる前に洗ってしまった方が毛を維持するのにいい場合が多く、そのシャンプーの頻度は週1度か10日に1度くらいになります。使用するシャンプー、リンスによっても多少差が出ますので、個々にあったシャンプー剤を選ぶ必要があります。
 ショーに出陳する、あるいはカット研究に、というのであればまだしも、普通に家庭犬としてペットとして過ごすのであれば、無理にフルコートにするのも苦労を背負い込むだけになるかもしれません。毛玉がひどいと、スタンダードにもなれば解くだけで1時間どころか2時間以上もかかることはよくあります。犬にも人にも必要以上の負担にならないようにした方が無難のような気がします。

(余談:ショー管理の場合は、それなりに手を抜いても大丈夫なような管理をしますし、シャンプーやリンスもかなり研究します。毛の管理の大変さは承知の上での作業ですので、そもそも解くのに何時間もかかるような毛玉は最初から作りません。というか、作らない努力をしつつ、ショーのための手入れや管理は、日々のルーティーンとしてごく当たり前の事としてやっています。よく考えてみると時間もそれなりにかかるので大変は大変ですが、このへんのノウハウがない一般家庭では、もっと恐ろしく大変だと思います/苦笑)

 この数年は、顔にクリッパーを入れず顔回りの毛を残した「テディベア・カット」が流行のようです。顔を刈るか刈らないかは好みの問題ですが、もしテディベアやマスタッシュにしている場合は、口回りが汚れやすいので清潔に保てるよう気をつけてください。ここが汚れていると顔が臭くなる原因にもなりますので、要注意です。

★運動について

 仔犬のうちは、無理な運動はさせないように気をつけてください。特にトイはただでさえ華奢ですので、高い所から飛び降りたり、必要以上に跳ね飛んだりしないように気をつける必要があります。また、室内の床は滑りにくいようにしておく方が足腰、膝のために良いでしょう。

 仔犬は自分が楽しければ自分の体力や能力以上に運動してしまいがちです。興奮していれば余計に自分で自分をコントロールできなくなるので、飼い主が時には止める必要もでてきます。骨格ができ上がっていないうち(生後1年〜スタンダードは1歳半くらいまで)は特に注意してください。他の犬達と走り回って遊んだり、ボールやフリスビー遊びに熱中しすぎると、自分の体力を越えてもなお、まだやり続けてしまうことがよくあります。途中で休ませる、時間に区切りをつけることは遊びのけじめをつけるという意味でも大切です。よく、「自由運動を」と本などに書いてあることがありますが、自由運動というのは、犬が勝手に好きなだけやらせていいものではないと感じます。
 また、犬が遊ぶ場所の足元や環境が安全かどうかも考えてください。固いコンクリートやアスファルトは、成長期の犬は当然のことながら、大人の犬の関節にもいいわけがありません。できれば軟らかい草地、芝生、土の上で運動させてください。自転車の引き運動も、環境次第では飼い主にも犬にも危険なことがありますし、この場合は特にアスファルトの上を走るようになるので注意してください。

余談:ドッグランは両刃の剣です。仔犬の社会化という名目で連れていかれる方も多いかと思いますが、見ず知らずの赤の他人の行動特性も気質・性格もわからない犬達の中に仔犬を放り込むことは、時に危険なことにもなります。自分の犬は仮にコントロールができたとしても、見ず知らずの相手の犬がコントロール不能かもしれません。ドッグランでいじめられて、その後自分の身を守るために相手を威嚇したり、ケンカを覚えてしまうケースもあります。悪気はなくても遊び方が乱暴すぎる犬もいます。犬同士で1つのボールやフリスビーを追いかけてそれがケンカに発展することもあるでしょうし、そもそも、複数の犬が1つのボールなどを全力で争って激しくぶつかるなど、肉体的な危険もあり得ます。交通事故の心配もなく、犬嫌いの人達にも遠慮せずにリードを放して自由に遊べるドッグランは魅力でもありますが、賢く使う必要があると思います。

 運動のさせ方や量ですが、確かにある程度の「運動」は必要です。けれど、個体差はもちろんありますがアスリートのように鍛え上げるほどの大運動量は必ずしも必要ではないと感じます。運動の量や長さ、きつさなどよりもむしろ、中身の工夫が必要ではないかと思います。私自身は「犬の運動について」でも書いているように、犬同士だけで好き勝手に遊ばせたり、公園などでやたらとリードを放して好きなだけかけずり回らせたりすることは好みません。これらの行為に反対の意思を持つもう1つの理由は、犬の要求に見合った運動を毎回繰り返してそれを日常的にやっていると、犬の運動要求はますますエスカレートし、いずれは飼い主のコントロールができなくなるおそれが強くなってしまうからです。常に犬達との追いかけっこや自分が満足するまで走り回るような運動をしていたら、毎日でもそうしないと犬は満足しなくなる可能性が高くなります。特に若いうちの運動欲求や体力はある意味、天井知らずの部分がありますので、敢えてそれを飼い主側が管理する必要があると思います。プロの運動選手でも過剰なトレーニングで体をかえって壊すこともあるのですから、加減知らずの若い犬は特に飼い主がある程度管理してやった方が健康のためにもいいと感じています。
 いつもいつも全力疾走させなくても、工夫次第で犬の運動不足や欲求不満はある程度解消できます。基本的なトレーニングを遊びの感覚で教えることも、頭のいいプードルの知的欲求を刺激するという意味で価値があります。この他、トリックを教えたり、飼い主と一緒に遊べる工夫やゲームをする、最近出ているパズル式の犬のオモチャ(ツイスト&トリートとかコングとか)を与えることもいいでしょう。プードルは飼い主と一緒に遊んだり何かをする、ということをとても楽しみますし、飼い主とのコンタクトを求める面が強くありますので、ぜひ工夫して犬と一緒に楽しんでほしいと思います。そして、こういう一緒に楽しむことが飼い主との関係作りに多いに役に立つということを忘れずに!

 また、運動というと、走ったりすることを真っ先に思い浮かべるかもしれませんが、散歩も犬の社会化を促進するという意味で大切です。「社会化」と聞くと、仔犬の頃の話だけだと誤解される方も多いのですが、社会化は仔犬の時期限定ではありません。人の社会の中で暮らす以上、犬達はこの過密で忙しい人間社会のいろいろなことや刺激に慣れる必要があります。静かな場所、人込み、道路沿い、学校の近く、ただ歩くだけでもいろいろな場所を体験できます。散歩の最中に他の犬とすれ違ったり、猫が横切って行ったり、知らない誰かに話しかけられたりするかもしれません。これらの何気ない1つ1つの日常の出来事が、絶好のトレーニング・チャンスにもなります。交差点で信号待ちの間は座っていることとか、他の犬とすれ違う時は冷静でいること、知らない人と接する時はどうしているべきか、猫が飛び出して来ても追いかけないこと、などなど。そして、何よりも大事なのは、この犬との散歩を飼い主自身が楽しむことではないかと思います。当然そのためには、まず仔犬のうちから散歩の時はリードを引っ張って歩いてはならないということを教える必要があります。

 私の場合は常に同じパターンでの運動にならないよう、トレーニングを挟みながら工夫しています。散歩だけ(歩くだけ)の時もあれば、オモチャやボールを使って一緒にかなり体を動かすこともあるし、犬と追いかけっこをすることもよくあります。基本的には犬だけの勝手にはさせず、広い場所でもロングリードを使って常に犬と一緒に動き、自分と犬との遊びとしての運動をしています。興奮しすぎてコントロール外(ブチ切れ状態)になる前に中断するなり、やめるということもしています。ロングリードを使って走ったり、ボール遊びをしても、合間にぶらぶら一緒に歩くなど全体で強弱をつけています。もちろん、最高に楽しく思い切り遊ぶ前は「お勉強」(トレーニング)をやってからですし、お楽しみの最中にもお勉強が差し挟まれる場合もあります。
 散歩は私にとっても楽しみの1つです。何もない場所をただ漠然と歩くだけではなく、人込みのあるところや公園、交通量のある道路沿いなど、いろいろな所にできる限り連れて行っています。同じ所に行くにしても毎回ルートや時間も違う、という具合です。

★プードルはもともとは水猟犬ですが・・・

 運動の1つに、水泳を考えていらっしゃる方もいるかもしれません。水泳は、股関節が悪い子にもいい運動になりますし(負荷が少ない)暑い夏の水泳はきっと犬も楽しいと思います。プードル、それもスタンダード・プードルはもともとが水猟犬なので、泳がせてみたいと思う方も多いかと思いますが、その際には、どうか以下の点に注意してください。

 まず、一部の犬種を除いて、生まれつき最初っから上手に泳げるという犬は少ないと思います。いきなり深い所や流れの速い川、波の荒い海に放り込むのは危険です。ある程度上手になるまでは安全な浅瀬で「水遊び」程度の方が無難でしょう。また、うまく泳げるようになっても何があるかわかりませんので、安全を考えて犬用のライフジャケットなどを使うことをおすすめします。なおかつ、当然呼び戻しはできるようにしておきましょう。
 もう1つ、ぜひ覚えておいていただきたいのは「水猟犬だった時代のスタンダード・プードルが、今のような派手なショー用のフルコートであった訳ではない」ということです。確かにショーカットの原点は「泳ぎやすいようにあちこちクリッパーなどで毛を刈った」ことですが、今のショーリングにいる犬達と同じような長くて重いメインコートを着ていた訳ではないのです。実際、北米でスタンダードをハンティングやワーキングトライアルに出している人達は、かなり短く刈っているか、全身クリッパー(丸刈り)か、せいぜいケネルクリップです。コンチネンタルのスタイルにしていてもメインコートやトップを通常のショースタイルよりもずっと短く詰めた格好になっています。(このへんはPCAレポートのココと、ココの真ん中あたりをどうぞ。コンチのスタイルでも全体に短く、軽いスタイルになっているのがわかると思います。)
 どんなに水泳が上手な人でも、プロであっても、普通に洋服を着たままプールに入ったらまともに泳ぐことはできません。実際に毎年夏場に溺れた人を助けようと飛び込む人は、水泳が得意だから飛び込むと思うのですが、結果としてその助けようとした人自身が溺れるということがよくあります。体に密着した水着一枚、あるいは裸であれば難なく泳げるのも、靴はいてジーンズはいてシャツを着ている、それだけで自由が利かなくなります。(事故防止のために、洋服を着たまま泳ぐ体験会とかってありますよね?)これは、昔は水猟犬であったプードルでも同じことです。ショー用に伸ばした重いフルコートのまんま水に付けたら、そのコートが水を吸って重くなりますので泳ぎづらくなって当然です。そして、これは溺れるといった事故の元にもなります。(実際、アメリカでは自宅プールで溺れるという話はそんなに珍しくないのです)
 ハンティングをやる人達が毛を短くするのは、単に手入れの煩雑さを避けるだけの問題ではなく、こういう安全面を考えてのことでもありますので、もしバンバン泳がせたいのであれば毛を短くしてやるなり、ライフジャケットを使うなり安全対策を万全にしてからにしてください。

★クレート

 もう一つ教えておきたいのは、クレート内で静かに過ごすということです。
 これは仔犬のうちに慣らしておいた方が楽でしょう。クレートに難なく入ってそこでゆったり過ごすことができれば何かにつけて便利です。クレートに入ったこともない子が、万一お預かりや入院となると、預かり先や病院でのストレスは倍増されてしまいます。
 車での移動も、できればクレートを使った移動の方が安全です。あってほしくないことですが、例えば万一交通事故にあった場合、犬が車の座席で自由にしているよりもクレート内にいた方が怪我をする可能性がグンと減ります。また、車に乗って移動している間に外を見て興奮して騒ぐ子がいると運転する方も気が気ではありません。飛行機での移動となると当然、クレート内で貨物室となります。飛行機で遠距離旅行をするような可能性がある場合、いきなりのクレートにいきなりの空の旅は犬にとって過酷過ぎです。
 クレートの大きさは、平均的な大きさのスタンダードであればバリケン400が適当です。室内クレートで寝床として使うとしたら、90cm×60cmの床面積が取れる大きさのものが最低限必要になります。車など移動用のクレートは、不必要に大きいとかえって犬が不安になることもあるようです。

 私自身は、交通事故の経験はないのですが、知人が正面衝突の事故を経験しています。この時、シーズーとコーギーが乗っていたのですがそれぞれクレートに入っていたために軽い打撲だけで済みました。ちなみに、シーズーのクレートは後ろの座席から前の座席まで衝突のショックで飛んできたそうです。もしクレートに入れていなかったら相当の怪我をしたでしょう。この時、人間の方は救急車で病院に連れて行かれたほどの事故でした。(幸いにして軽傷で済みました)
 また、他の人の話で、車が横転するという事故を聞いたことがあります。この時も車(ワゴン)内には犬もいましたが、クレート内にいたため犬に怪我は全くなかったそうです。

★ショーマナーとしつけの誤解

 私がトイを出陳していた昔「お座りを教えてはいけない」と周囲からよく言われました。今でも、ショーに出す犬にはリング内で座ることを防ぐために「座れ」を教えない方がいいと言う人は多いような感じがしなくもありません。本当にそうなのでしょうか?
 答えは「否」です。教えたければ教えて構わないですし、むしろスタンダードなど大きな体格の子は教えておいた方がショー以外で困りません。(1年365日のうち、ショーに出る日数って何日だと思いますか?例え毎週出陳したとして!)
 それと、プードルですよ? 甘く見ちゃだめです。(笑)やはり賢いです。きちんと「座ること」と「立っていること」を区別して教えればショーの最中にペタペタ座り込むことはありません。要は教え方ではないかと私は思います。
 参考までに、私がリアンに最初に教えたのはテーブルの上で立っていることと、どこでも伏せができることの2点です。このへんがきちんとコマンドでできるようになってから「座れ」を教えました。立つことと伏せることは、最初に書いた通り手入れの点からも絶体に必要であるからです。座れを教えた後、審査中のリングでリアンが勝手にペタペタ座ることはまずありませんでした。
 ポイントは、しっかりと立ってステイポーズをすることと、座ることの区別を犬にわかりやすいように教え、ちゃんとできた時はほめることです。そして逆を言えば、プードルはその賢さゆえにいつでも新しいことを学べます。

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以上、思いつくままに書きましたが、参考になれば幸いです。

2005-1

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